月の物語
「かぐや」のお話から、もうちょっとだけ。
1
古来より人々は、月の光の糸をつむいで物語を編むのが好きであった。
月の光で編んだ物語は、狂いやすく、移ろいやすく、孤独で、いじわるで、ひんやりとしているが、昼間の世界から自由で、また独特の優しさやかぐわしさに満ちてもおった。
村上春樹の1Q84(book1,book2)も、そういった月の光で編んだ物語の大きな流れの上に、ただよっておるのかもしれん。
2
なんつっても平家物語だもの。
3
おおっ、ひょっとしたら「言葉」とは人間の脳の中に生まれたものではなく、「太陽」と「月」の間に生まれたものなのかもしれない。
これは言いすぎだろうか?
ごめんなさい、言いすぎでしょう。
4
思えば、初期の村上作品には、「ジェイ」がいたなあ。懐かしいなあ。「ジェイ」はお月様だったのか?
「アフターダーク」あたりから「ジェイ」のまなざしが戻ってきたのか?
5
うーん、違いますよね。
「今も昔も、月はずーっと空にあり、そして、消えてしまったものは二度と戻ってはこない」
これこそ、月の物語がいつも語ってくれる、いじわるな真実。
6
でも、僕らは旅を続ける。僕らは旅の途中。
月の光があれば、夜を旅することだって出来る。