真夜中の訪問者

さささささ、小さな音、けれども確かに時空をゆがめてしまうような濃密な音。
真夜中午前0時を少し回っている。


やつだ、やつが来た!
僕は起きあがると部屋の隅を見る。
いた。ムカデ君だ。
相変わらず、足が多い。し、しかもでかい。
用意してあったティッシュを手に一気に飛びかかる。
シャーッ
敵もさるもの、素早く家具の下へ。
それにしてもなんて不気味なやつなんだ。
何故神はあのようなものをお造りになったのか。
差別はいけない。
しかし、生きとし生けるもの、生きて行くには多少なりとも愛嬌というものが必要なのではないだろうか。
彼にはそんなサービス精神は皆無である。
むしろわざと挑戦的なルックスを選んでおる。
それにしても素早い。あっという間に、部屋の反対側へ。
しかし今度は逃さなかった。
一発、二発、三発、近所迷惑な音を響かせて、
勝負はついた。
実にタフな戦いであった。


僕はしたたかに手首を傷めた。


このような殺生は決して褒められたものではない。
朝日新聞に見つかったら、叱られそうだ。
この次はそっと見過ごそう。
うん、そうしよう。