夏草
最近出合った胸にせまる映像ふたつ。
ひとつは先日の台風の時のもの。
川の中州に取り残された男の遠景だ。
彼はホームレスであろうか、
轟々とうなる濁流の中、
まるで草の船に乗るように、
座り込んで一つの方向を見つめていた。
男はいつ濁流に飲み込まれてもおかしくなかったし、
男はその運命にあらがってはいないように見えた。
が、しばらくすると、立ち上がり、よろよろと画面から消えた。
結局救出されたようだ。
もうひとつ、
男はうつろな目で自らの辞任とそのわけを語り、
そして、
画面から消えた。
彼もまた救出されたのだろうか。
世にシンプルなピラミッドを思い描くなら、
たくさんの男たちが、
このふたりの男の間の、
石づくりの合戦場で、
日々戦に負け続けている。
そんなこんなで、たまらなく胸にせまってきたのだ。