追跡者


今日は暖かな一日でした。
こんな日は必ず頭痛になるのですが、今日もなりました。
近鉄ギターショックでしばらくボーっとしていましたが、
昨夜は3人組の男たちに散々追い掛け回されたあげくに、
巨大な一枚の布に描かれた遊園地の罠にひっかかって、
間違って迷い込み、
ついに捕らえられるという失態を演じてしまいました。


実家の近くにある5街区の小さな公園に、
最近できたという遊園地に行ったわけです。
うっかりしてました。
小さな子供が数人駆け回ったらいっぱいになるようなところです。
そこに巨大遊園地がオープンするなんて、
疑ってかかるべきだったのです。
その1時間くらい前には男たちが部屋に進入してくる直前に、
2階の窓から隣の家の屋根に飛び移り、
ホップステップジャンプで200メートルくらいの大ジャンプまでしました。
絶対に捕まらないぞという強い意志の力を使いました。
それがあっという間に捕まってしまったのです。


ぼくは縛りあげられました。
「お前の命はもう終わりだ」
男が言います。
「最後にひとつだけ聞いてやる。靖国神社のことどう思う?えっ?」
意外な質問でした。
というか最後に聞くのはこちらじゃないのか?
しかし、とっさにぼくは答えました。
「馬鹿じゃないのかおまえたち。
道をはさんでふたりの建築家が家を建てている。ひとりはコンクリートのモダンな
のを、もうひとりは奈良の東大寺大仏殿みたいなのを建てている」
「それがどうした。兄貴、こんなやつ早く殺っちまいましょうぜ」
小柄な男がいらだっている。
「ちょうど道を通りかかったところで二人が聞いてくる」
「私たちはこの街を良くするために、
美しい建物を建築中です。あなたはどちらに住みますか?ってね」
「それが?」
「そこでぼくはこう答える」
「ん?」


「ぼくはそのへんのアパートで結構です」


そう言うやいなや、
ぼくは後ろ手に縛られたまま、横っ飛びに飛んで、
ちょうど走ってきたトラックの荷台に飛び移りました。
幸いトラックの運ちゃんは悪いやつではありませんでした。
ミラーのところに子供と奥さんの写真をぶら下げているいるほどでした。


ふと空を見上げると、
さっきぼくが捕らえられた巨大な布の遊園地が、
風にあおられて飛んでいました。