蜂の巣の森で

あの日少年たちは、どんな歌を歌ったのだろう。


彼等はいつも道に迷っていた。
でもあたりまえだ。
まっすぐな一本道を歩いていたわけではない。


はじめての道を右へ曲がり、左へ曲がり、
時には引き返した。
歌を見つけるためではない。
道に迷い続けることが歌だった。




少年よ
君はちいさな音楽が
いくつもからみあうらせん
赤と
青と
黄色の玉の
楽しい合奏



たくさんの森を抜けていくと、
おおきな湖に出た。
満月が輝き、すべてがくっきりと見渡せた。
一瞬、迷いは消え、
歌は歌のない歌を歌った。
それはとっても美しい時間だった。
けれどもそれはとっても悲しい時間だった。


すぐにおおきな風が落ちてきた。
鏡のようだった湖面は、
いくつものリングになって、
あっという間に、
少年たちを包みこんでしまった。


やがて、
赤や黄色や青の玉や、
はじめて見るような玉がいっぱいこぼれだして、
また歌を歌いだした。


あの時の歌が、どんなだったか、
思い出そうとするのだけれど、


どうしても思い出せない。