回転とは何か?

ふたつの大きな目玉が、天然芝の広がる美しい公園に据え置かれている。 直径は1メートルくらいありそうだ。 僕が歩いていくと、向うからこちらを見つめている。 犬を連れて散歩する女性がその目玉の前を横切る。 だが彼の眼差しはまっすぐ僕に注がれている…

寝なおしにご注意

わしはとある宗教的な儀式に招待された。 別にいかがわしいものではないはずだ。 何故なら招待状をくれたのは、名前も顔も知らないが、あの三平ストアの社長なのだ。 もはや夕暮れであった。 その部屋は静かで、あたたかく、薄暗く、愛に満ちていた。 が、よ…

冥王さん

かつて我々が宇宙を旅したとき、 冥王星は村はずれのお地蔵様でした。 旅人はこの星でこの世界の果てを知り、 そしてまだ見ぬ次の世界を目指したのでした。 しかしある時、村の長老たちは、 このお地蔵様を格下げなさいました。 それはそれでしょうがない部…

逃亡者

高島屋らしきデパートの一階と地下の間に大量に秘密文書を隠し持っていた男が、 その秘密を守るために、何故か買い物に来ていたぼくに万引きのぬれぎぬを。 たしかに知らない間に手の中には観光バスなどに乗ったときもらえるような 駄菓子の詰め合わせ袋が。…

尊敬してます

父は長年開業していた医院を去年いっぱいで閉じた。 往診カバンというのだろうか。 使い古されていて、とても素敵だ。 老いたブルースマンのギターのようだ。 ところで、今のお医者さん、 往診ってするのかな?

迷いの島

「鳥」という話がある。 鳥たちが突然凶暴になって人間界を襲うやつである。 確か鳥たちは潮の満ち干きとともにやって来たり去っていったりした。 潮の満干とともに移動するものは凶暴化した鳥だけではない。 マングローブの森も、 非常に静かにではあるが長…

おしゃべり好き

今回は行くことができませんでしたが、 島のある岬の突端には、灯台の代わりに時計台があって、 沖を行く船に向かって妙ちくりんな時を照らし続けているということです。 そのおかげで船乗りたちはすっかり陸のことを忘れてしまい、 いつまでもそこらをまわ…

追跡者

今日は暖かな一日でした。 こんな日は必ず頭痛になるのですが、今日もなりました。 近鉄ギターショックでしばらくボーっとしていましたが、 昨夜は3人組の男たちに散々追い掛け回されたあげくに、 巨大な一枚の布に描かれた遊園地の罠にひっかかって、 間違…

大阪恐るべし!

昨夜はみなさんがぐっすり眠っているあいだに、 大阪まで行ってきましたよ。 とある切れ者の女性実業家の秘書として招かれたのです。 しかしその女性のどこがどう切れるのか、 はたまたいったいどんな商売をしているのか、何も知りませんでした。 女性はぼさ…

コロスケに捧ぐ

不思議な光を見た。 冬枯れの街、 コンクリートで固められ、 流れを失った川。 冬鳥が浮かび、 枯葉が浮かび、 ごみが浮かび、 その向こうに、 半分光となった、 神代の時の男の姿が浮かんでいた。 その光があまりに古いものだったので、 ぼくは驚いた。 光…

ピアノの調律のおじいさん

その森はあまりに深すぎて、 どんな風も届きません。 風は何度もその森を吹き抜けようとするのですが、 必ず、一番深いところへ届く前に、 もう風ではなくなってしまうのです。 その、森の、まん中の、一番深いところは、 小さな広場になっていて、 そこには…

曼珠沙華

深い深い眠り。 それは目覚めているときよりも、 ずっとずっと奥のほうの世界にいることだと思っていました。 ところが最近こんな話を聞きました。 その人は、とある日曜、埼玉にある曼珠沙華の群生地へハイキングに行ったそうです。 飯能の駅から乗り換えて…

タカハシタモツさんの手記

散歩というのはいつも楽しいことばかりではない。 人生と同じである。 誰かの心無い一言がすべてをだいなしにしてしまうことだってある。 職場で、教室で、ネットで、 悲しい思いをした人も少なくないであろう。 時には殺人事件にまで発展することもあるでは…

木造の宇宙船

話し出すと、とっても長い話なのですけど、 その最後のところだけをお話します。 小高い丘の上に木造の宇宙船らしきものを見つけました。 大きさは多摩六都科学館(そういうものがある)ぐらいでしょうか。 まわりは新興住宅地なので、まだまだ空き地がたく…

赤鉛筆の書き味

赤鉛筆の書き味というのは独特です。 やわらかく削れていく時間がなんともいえません。 どんなにさきっぽっを尖らせても、すぐにまるくなってしまい、 非常に不器用なやつだなあという印象もあります。 そんな赤鉛筆が深夜にドアをノックしたとしたら、 どう…